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広島地方裁判所 昭和42年(行ウ)20号 判決

広島県三次市十日市町二二〇〇の九

原告

原田豊

右訴訟代理人弁護士

椎木緑司

広島県三次市十日市町野尻九九二番地の一

被告

三次税務署長 松島操

広島市上八丁堀六番三〇号

被告

広島国税局長 小泉忠之

右指定代理人大蔵事務官

藤田敏雄

右被告二名指定代理人大蔵事務官

三坂節男

藤井辰也

平山剛造

吉川定登

杉田泰啓

同国税訟務官

田中芳夫

武田廣治

東京都千代田区霞ヶ関一丁目一番一号

被告

右代表者法務大臣

瀬戸山三男

右指定代理人法務事務官

菅近保徳

右被告三名指定代理人検事

河村幸登

主文

原告の被告広島国税局長に対する差押処分取消しの訴を却下する。

原告のその余の請求のいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

1  被告三次税務署長が昭和四一年一一月一六日付で、原告の昭和三八、同三九、同四〇年分の各所得税の総所得金額をそれぞれ三七九万六、〇〇〇円、一、六五五万二、三〇〇円、一、二三九万六、一〇〇円とした各更正処分ならびに各過少申告加算税賦課決定処分(ただし、昭和三八年分の総所得金額および過少申告加算税額は、昭和四四年三月一三日付再更正処分ならびに過少申告加算税変更決定処分後のもの。)は、いずれも無効であることを確認する。

2  被告広島国税局長が昭和四二年一月二一日付で別紙目録第一記載の有体動産について、昭和四一年一二月二八日付および昭和四二年二月七日付で同目録第二記載の不動産および同目録第三記載の電話加入権について、それぞれした差押処分は、いずれも無効であることを確認する。

3  (予備的請求)

前記第1項および第2項記載の各処分を取り消す。

4  被告広島国税局長が昭和四二年六月二二日付で原告の審査請求を棄却した裁決を取り消す。

5  被告国は原告に対し、昭和四二年二月七日から前記差押処分が解除されるまで、一、四七九万七、四〇〇円に対する一〇〇円につき一日二銭の割合による金員を支払え。

6  訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

二、請求の趣旨に対する被告らの答弁

主文と同旨

第二、当事者の主張

(本案前の主張)

一、被告

原告の請求の趣旨第3項の差押処分の取消を求める訴は、行政不服申立を経由していないから、不適法である。

二、被告の主張に対する原告の反論

本件においては、差押処分の基本たる課税処分の無効ないし取消および差押処分の無効等が訴求されており、かつ課税処分取消訴訟の前置手続として国税通則法八七条(ただし、昭和四五年法律第八号による改正前のもの)所定の審査請求がされ、これに対し審査請求棄却の裁決がされているのであるから、いまさら原告が右課税処分に従属する差押処分に対して行政不服申立をしたとしても、行政庁がこれを認めて差押処分を取消すことはあり得ないし、また、行政事件訴訟法八条の趣旨は、行政庁に対して再考の余地を与え、でき得るかぎり行政手続内で取消し等の行為を行わせようとしたものにすぎず、一連の処分を構成する個々の行為のすべてについて厳密に行政不服申立手続を経由しなければならないものではない。

したがつて、差押処分の取消しを求める原告の本訴は適法である。

(本案の主張)

一、請求原因

1 被告三次税務署長(以下、被告署長という)は、昭和四一年一一月一六日、訴外原田保に対する昭和三八年分ないし昭和四〇年分の各確定申告に基づく所得税賦課処分を取り消し、右確定申告にかかる所得を実質上原告が取得したものとみなして、昭和四一年一一月一六日付で、原告の総所得金額を昭和三八年分七〇九万四、五〇〇円、昭和三九年分一.六五五万二、三〇〇円、昭和四〇年分一、二三九万六、一〇〇円とする各更正処分ならびに右各年分につき過少申告加算税賦課決定処分をし、その頃原告に通知した。

2 そこで、原告は直ちに右各処分につき被告広島国税局長(以下、被告局長という。)に対し異議申立をしたところ、この申立は審査請求とみなされ、同局長は、昭和四二年六月二二日、これを棄却するとの裁決をし、同年七月一〇日、その旨原告に通知した。また、被告署長は、昭和四四年三月一三日付で、昭和三八年分の総所得金額を三七九万六、〇〇〇円とする再更正処分および過少申告加算税変更決定処分をし、その頃原告に通知した(以下、請求の趣旨において無効確認または取消しを求める被告署長の各処分を本件更正処分等という。)。

3 しかし、本件更正処分等は、次のとおり無効であり、または少なくとも取消しを免れない。

(一) 本件更正処分等は、明らかに納税義務者の認定を誤つたもので、違法である。すなわち、

(1) 原告は、昭和二〇年八月から広島県三次市において原田興行社と称する建設業(以下、旧原田興行社という。)を営んでいたものであるが、訴外原田保は、昭和二〇年以来一〇年余の間旧原田興行社に勤務し、その間同社の総括責任者として建設業の技術面、経営面の要領を習得し、建設業法第五条(ただし、昭和三六年法律第八六号による改正前のもの)所定の建設業者登録要件を備えるに至つた。そこで原告は、昭和三一年八月、退職制度の一環として、同訴外人を原告から独立させ、原田建設を設立させたものであり、その資金及び必要な機械器具等は、原告が同訴外人に対しその退職金として与えたものである。また、設立後原田建設のために購入された土木機械器具、什器備品は、すべて同訴外人が独自に売買契約を結んだものである。そして、原田建設の建設業法に基づく登録は、広島県知事の承認したもので、広島県も地元の三次市も同訴外人が単独で原田建設を営んでいる事実を知悉し、従つて同訴外人に対し広島県や三次市の工事の請負をさせており、この点は建設省においても同様である。

(2) 右事実の外、(イ)建設業者の事業場については、労働基準法に基づき、労働基準監督署による監督がなされ、これは現実に労働基準監督署係官が事業場に来訪して実態を調査するものであるが、この関係でも、原田建設については、設立以来訴外原田保が責任を持ち、原告とは全く別個に事業場の認定を受け、報告書を提出していること、(ロ)建設現場で使用するためダイナマイト等を火薬店から購入する場合には、広島県知事の火薬類譲受許可証を必要とする(火薬類取締法)が、右知事は、原田建設の事業のために、同訴外人に右許可証を交付していること、(ハ)原告は、同訴外人の独立後もなお別個に旧原田興行社の事業を維持していたものであるが、後記のとおり、広島県議会議員に選出された後、全面的に土木建設業を廃業したこと等の事実も原告の主張を裏付けるものである。

(3) なお、原告は、昭和三八年四月一七日に施行された広島県議会議員選挙に当選したので、原告が引続き旧原田興行社を営み広島県との間に土木建設工事に関する請負契約を締結し工事を施行することは、議員としての審議権行使の公正に疑義が生ずることを自覚し、そのころ自ら進んで旧原田興行社を廃止し、その登録を取り消したが、旧原田興行社は従業員数十名を使用していたので、右従業員の生活を保障するため、昭和三八年四月二七日原告の所有していた建設機械等を貸与して、訴外原田ツ子コを主体として株式会社原田興行社(以下、新原田興行社という。)を設立し、関係官庁の認可を得て、事業の継続を図つたものであり、原告自身は、右会社とは関係を持たず、全面的に土木建設業を廃業している。それゆえ、銀行その他の金融機関との取引も、原告、訴外原田保、新原田興行社はそれぞれ独立して別個に行つており、生活関係も峻別している。

(二) 被告署長は、原告の所得税とは別に、訴外原田保が原田建設を設立した昭和三一年八月から、毎年継続して同訴外人に対し原田建設の事業所得の所得税を賦課し、あるいは、少なくともその指導によつて原田建設の所得を申告させ、その関係は一〇年近く継続していたものであるところ、昭和四一年に至つて突如原田建設の所得は原告に帰属するものと認定するのは不合理であり、被告署長の本件更正処分等は禁反言の原則ないし信義誠実の原則に違反する。

(三) 仮に原田建設の所得が原告に帰属するとしても、

(1) 被告署長は、原告の昭和四〇年分総所得金額を推計により認定しているところ、右所得金額は、訴外原田保の所持する帳簿等を調査すれば実額による認定が可能であつたから、未だ推計課税の必要はなく、昭和四〇年分の総所得金額を推計によつて更正したことは違法である。

(2) 本件更正処分等は、新原田興行社の法人税法違反嫌疑事件に便乗して行われたものであり、所得金額の計算の基礎が不明確で計算に誤りがあるから違法である。

4 被告局長は、本件更正処分等にかかる所得税の滞納処分として、昭和四二年一月三一日、別紙目録第一記載の有体動産について、昭和四一年一二月二八日および昭和四二年二月七日、同目録第二および第三記載の不動産および電話加入権について、それぞれ差押処分をし、さらに、同年六月九日、右不動産の差押に対し参加差押処分(以下の各差押処分を、以下、本件各差押処分という。)をした。

5 しかし、本件更正処分等が前記主張のとおり無効または取り消されるべきものである以上、これに基づく被告局長の本件各差押処分も無効であり、または取消しを免れない。

6 被告国は、所得税の徴収にあたり公権力を行使する被告国の公務員が違法な滞納処分を実施しているのであるから、国家賠償法一条に基づき、昭和四二年二月七日から右滞納処分の解除があるまで、差押処分を受けた動産、不動産、電話加入権の右滞納処分当時の時価総額一、四七九万七、四〇〇円に対する一〇〇円につき一日二銭の割合に相当する損害金を賠償する義務がある。

7 よつて、請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。

二、請求原因に対する被告らの答弁

1 請求原因1.2の各事実は認める。

2 同3(一)のうち、原告が昭和二〇年八月から旧原田興行社を営んでいたこと、訴外原田保が旧原田興行社の使用人であつたこと、昭和三一年八月訴外原田保名義で原田建設が設立されたこと、原告が昭和三八年四月一七日施行の広島県議会議員選挙に当選したこと、同月二七日新原田興行社が設立されたことは、それぞれ認めるが、その余の主張はいずれも争う。

3 同3(二)のうち、訴外原田保が被告署長に対し昭和三一年以降土木建築業に関し所得税の納付をしていることは認めるが、その余の主張は争う。

4 同3(三)の主張はいずれも争う。

5 同4の事実は認める。

6 同5および同6の各主張は争う。

三、被告らの主張

1 原告および訴外原田保は、被告署長が本件更正処分等にかかる所得金額の帰属者を原告と認定した昭和四一年に至るまで、事業所得につきそれぞれの名義により所得税の申告をしており、右各申告は形式的には違法がなかつたため、右所得の帰属の実態については把握されないまま、被告署長は両名の申告を問題とするに至らず消極的に是認してきた。

2 ところが、昭和四〇年七月、原告ならびにその使用人である訴外原田保および同中岩雄にかかる刑事事件が発生し、右事件に関連して新原田興行社の法人税法違反嫌疑事件が表面化し、右事件の調査に関連して、被告署長が原告の本件各係争年分の所得税について調査したところ、訴外原田保名義となつているいわゆる原田建設は、その設立の過程、経理の状況および経営の実態から判断して、その実質的な事業の主宰者は原告であり、右訴外人は単なる名義人にすぎず、原田建設の所得はすべて原告に帰属すると認められたので、所得税法三条の二(ただし、昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)に基づき原田建設の所得を原告の所得と認定し、これを原告の申告所得額に加算して更正をし、これに伴い訴外原田保については、原田建設の所得は実質上同訴外人に帰属しないので、除斥期間を除き昭和三八年分ないし昭和四〇年分の同訴外人の総所得金額を零とする更正をしたのである。

3 被告署長において原田建設の所得が原告に帰属するものと認定した根拠は、次のとおりである。

(一) 原告は、かねて広島県三次市において建設業旧原田興行社を営み、主として広島県および附近の地方公共団体から土木建築工事を請負つていた。ところで、原告は、昭和二九年三月三次市議会議員に選出されたが、昭和三一年に至り、同年法律第一四七号により地方自治法が改正され、普通地方公共団体の議会の議員は当該地方公共団体に対し請負をすることができないこと等を規定する同法九二条の二が追加されたことにより、原告は三次市に関する土木建築の請負工事をすることができなくなつた。そこで原告は、同年八月、その使用人である訴外原田保を責任者として原田建設を設立し、これに三次市に関する土木建築工事を請負わせていたのであり、原田建設の設立資金も機械器具もすべて原告が拠出したものである。これは、原告が右法律の規定の適用を免れるために、形式的に訴外原田保を名義人として、原告の事業を継続していたものであることにほかならない。

(二) 原告は、昭和三八年四月一七日に施行された広島県議会議員選挙に立候補し、当選したので、地方自治法九二条の二により、それまで旧原田興行社として行つてきた県関係の土木建築工事を請負うことができなくなつた。そこで原告は、右規定の適用を免れるため、同月二七日、原告がすべてを出資して、その妻訴外原田ツ子コを代表取締役、訴外原田保を専務取締役として新原田興行社を設立した。

(三) ところで、原田建設と新原田興行社とは、事務所が同一箇所にあり、両者間において人夫や資金の貸借が行われ、また取引先に対する債務が両者一括して支払われている等の場合において両者間で清算が行われた事実は認められない。また、訴外原田保が旧原田興行社の事業を譲り受け原田建設として原告から独立したものとすれば、その者が再び戻つて新原田興行社の専務取締役となつていることは極めて不自然である。

すなわち、原田建設と新原田興行社は、その外見にかかわらず、原告の事業であり、原告は、実質上の主宰者として両者の業務全般の統轄をしていたものである。

4 被告署長の本件更正処分等は、禁反言則ないし信義誠実の原則に違反しない。

すなわち、本件においては、被告署長の係官が原告らの営業実態を認識したうえで、あえて訴外原田保に対し同訴外人名義で原田建設の所得税の申告をさせたという事情はなく、右訴外人名義による納税申告に対し、本件更正処分等のあるまでに被告署長により是正の措置がとられなかつたというのみであり、これにより同署長が右訴外人に対し、原田建設の所得税を賦課したり、あるいは右申告を公権的に承認したりなどしたことにはならない。

原告は、自己の都合からあえて自己の営業を訴外原田保名義で行い、同訴外人名義で所得申告をしたものであるところ、課税が所得の形式的名義人に対してなされるのではなく、その実質的帰属者に対してなされるべきことは当然の法理であり、原告に対する本件更正処分等は、当初から原告が納税すべきであつたものにつき、原告自らの責任で納税されないままの状態にあつたのを改めて、原告に納税させるべく行われた是正の措置にすぎない。そこには、何ら法的に保護された原告の利益を侵害するという関係はなく、右是正の措置をとることは、むしろ課税庁に課せられた職責であるといわねばならず、何ら責められるべきものではない。

5 原告の本件各係争年分の総所得金額とその内訳は、次のとおりであり、本件更正処分等は右金額の範囲内でされているから違法ではない。

(一) 昭和三八年分総所得金額 四六五万〇五六六円

次の(1)、(2)の各所得金額の合計である。

(1) 給与所得金額(原告の確定申告額と同じ。)

九五万五、〇〇〇円

(2) 事業所得金額 三六九万五、五六六円

右事業所得金額は、被告署長が調査した資料に基づき、次のイ、ロの各収入金額から、ハ、ニの必要経費を控除して算出したものである。

イ、工事収入金額 一、八八二万五、九四六円

昭和三八年中の完成総工事収入金額三、五九三万八、〇三六円(別表二の工事収入金額の合計額)から、同年中に完成した昭和三七年からの継続工事のうち、昭和三七年分所得税で工事進行基準により既に課税済みの工事収入金額一、七一一万二、〇九〇円(別表一の説明参照)を差し引いた一、八八二万五、九四六円が昭和三八年分工事収入金額である。

次の(イ)、(ロ)の各金額の合計額である。

ロ 雑収入金額 五七万四、三九一円

(イ) 割戻金 三一万七、九九一円

右は、原告が訴外有限会社岩田砂利から受け入れた割戻金であり、その昭和三八年分受入額は別表七の「〈イ〉受入割戻金」の昭和三八年分欄記載のとおり四六万七、一二八円である。ところで、原告は、砂利単価の値下りのため、昭和四〇年八月、右訴外会社に対し五三万二、六三二円を返済しているが、右返済金がどの年度の受入割戻金から返済されたのか不明であるので、昭和三八年ないし昭和四〇年の各受入割戻金額の割合によつて按分し、右按分にかかる返済金をそれぞれの年度の受入割戻金から控除して残額を計上すると、昭和三八年分は、別表七のとおり三一万七、九九一円となる。

(ロ) 賃貸料収入 二五万六、四〇〇円

右は、原告が訴外広島県三次土木出張所長から受け入れた賃貸料収入であり、その明細は別表八のとおりである。

ハ 工事原価 一、二〇五万七、〇七三円

昭和三八年中に完成した工事の総工事原価二、二六〇万一、五四二円(別表二の工事原価の合計額)から、工事進行基準により、昭和三七年中に既に課税済みの前記工事収入金一、七一一万二、〇九〇円に対する工事原価一、〇五四万四、四六九円(別表一の説明参照)を差し引いた一、二〇五万七、〇七三円が昭和三八年分工事原価である。

ニ 一般管理費 三六四万七、六九八円

明細は別表一のとおりである。

(二) 昭和三九年分総所得金額 一、七〇〇万二、一八三円

次の(1)、(2)の各所得金額の合計である。

(1) 給与所得金額(原告の確定申告額と同じ。)

一四九万一、三七〇円

(2) 事業所得金額 一、五五一万〇、八一三円

右事業所得は、昭和三八年分と同様、被告署長が調査した資料に基づき、次のイ、ロの各収入金額からハ、ニの必要経費を控除して算出したものである。

イ 工事収入金額 三、七四四万五、二〇〇円

明細は別表一〇のとおりである。

ロ 雑収入金額(割戻金) 七四万六、一三六円

右雑収入金額は、昭和三八年分と同様、原告の昭和三九年受入の前記割戻金一一〇万三、〇〇〇円から、別表七のとおり前記返済金の同年分按分額三五万六、八六四円を差し引いたものである。

ハ 工事原価 一、九三九万六、三八三円

明細は別表一〇、一一のとおりである。

ニ 一般管理費 三二八万四、一四〇円

明細は別表九のとおりである。

(三) 昭和四〇年分総所得金額 一、九四〇万一、六五一円

次の(1)、(2)の各所得金額の合計である。

(1) 給与所得金額 一四五万九、八七〇円

(2) 事業所得金額 一、七九四万一、七八一円

次のイ、ロの各金額の合計である。

イ 工事利益金額 一、七八八万四、九四九円

原告の昭和四〇年分事業所得金額のうち、工事収入にかかる所得金額の計算については、原告が所持している帳簿書類を調査しても、必要経費を明らかにすることができなかつた。そこで、調査の結果判明した原告の同年分工事収入金額五、六四一万九、四〇〇円(明細は別表一二のとおり)に、原告の昭和三八年一月から昭和三九年一二月までの間の工事収入にかかる工事利益率三一・七パーセント(収入金額に対する工事利益金額の割合 算出過程は別表一三のとおり)を乗じて昭和四〇年分の工事利益金額を推計すると、一、七八八万四、九四九円となる。

ロ 雑収入金額 五万六、八三二円

右雑収入金額は、昭和三八年分と同様、原告の昭和四〇年受入の前記割戻金八万三、六四円から、別表七のとおり前記返済金の同年分按分額二万六、六三二円を差し引いたものである。

6 以上の次第であるから、被告署長の本件更正処分等には、原告主張のごとき違法はいずれも存在しない。

従つて、本件更正処分等を前提とする被告局長の本件各差押処分についても、なんら違法はない。

四、原告の総所得金額についての被告らの主張に対する原告の認否および反論

1 被告らの右主張は、昭和三八年、昭和三九年分の各給与所得金額を認める外、すべて争う。

2 昭和三八年中の原告および訴外原田保の工事収入金総額は、別表一四のとおり二、七八六万四、六三〇円である。

3(一) 昭和三九年分工事収入金額は、別表一五のとおり三、七八三万六、二〇〇円である。

ただし、右工事収入金額には、被告らが昭和三八年分工事収入金額であると主張する昭和三八年三次市本通祝橋線工事収入金三〇万円および同三次市三次町五日市工事収入金九万一、〇〇〇円(別表二参照)が含まれている。すなわち右両工事は昭和三九年五月一日完成したものであり、右工事収入金額は昭和三九年分に属するものというべきである。

(二) 昭和三九年分工事原価は、別表一五のとおり二、五八八万三、三八二円であり、同年分一般管理費は、四一五万三、四三〇円である。

4(一) 昭和四〇年分給与所得金額は、一四四万四、八七〇円である。

(二) 同年分工事収入金額は、別表一六のとおり三、九八五万四、三〇〇円であり、工事利益金額を算出するため、これに所得率を適用するとすれば、一般に用いられている建設業者所得率約一二パーセントによるべきである。

第三、証拠

一、原告

1  甲第一号証の一ないし七、第二号証の一ないし三、第三号証の一ないし一〇、第四号証の一ないし八、第五号証の一ないし六、第六号証の一ないし一〇、第七号証の一ないし七、第八号証、第九号証の一ないし四、第一〇号証の一ないし九、第一一号証、第一二号証の一ないし三、第一三号証の一、二、第一四号証の一ないし五、第一五号証の一ないし三、第一六ないし第二九号証を提出

2  証人森川孝義、同住吉正壮、同黒田敬治、同竹口繁 同井尻一彦、同上岡栄郎、同中岩雄、同原田保、同上広周一、同竹本晴義の各証言及び原告本人尋問の結果を援用

3  乙第一ないし第三号証、第六号証の一、二、第二五ないし第二七号証、第二九ないし第三二号証、第三四号証の一、二、第五五号証、第五七号証の二ないし五、第五八号証の一ないし四、第五九号証の一、二、第六一号証の一ないし五六、同号証の五七の一ないし三、同号証の五八ないし三六八、第六二号証の一ないし一〇五、第六四号証の一ないし二八八、第六六ないし一八八号証、第一八九号証の一ないし九の成立は知らない。その余の乙号各証の成立は認める。

二、被告ら

1  乙第一ないし第五号証、第六ないし第八号証の各一、二、第九号証の一ないし三、第一一号証、第一三ないし第二七号証、第二九ないし第三二号証、第三三、第三四号証の各一、二、第三五号証の一ないし三、第三六号証の一ないし一八、第三七号証の一ないし三、第三八号証の一、二、第三九号証の一ないし三、第四〇号証、第四一号証の一、二、第四二号証の一ないし七、第四三号証の一、二、第四四号証の一ないし三、第四五号証の一、二、第四六ないし第四九号証、第五〇号証の一、二、第五一号証、第五二号証の一、二、第五三ないし第五六号証、第五七号証の一ないし五、第五八号証の一ないし四、第五九、第六〇号証の各一、二、第六一号証の一ないし五六、同号証の五七の一ないし三、同号証の五八ないし三六八、第六二号証の一ないし一〇五、第六三号証の一ないし六、第六四号証の一ないし二八八、第六五号証の一ないし三九、第六六ないし第一八八号証、第一八九号証の一ないし九、第一九〇号証を提出

2  証人岩成久雄、同神崎政之介、同大崎利之の各証言を援用

3  甲第三号証の一、二、四、六、八、一〇、第四号証の一二、第六号証の二、四、六ないし一〇、第七号証の二、四、七、第一〇号証の一ないし九、第一一号証、第一五号証の一ないし三、第一六、一七号証の成立は知らない。第三号証の三、五、七、九、第六号証の一、三、五の各収受印部分の成立は認めるが、その余の部分の成立は知らない。第四号証の三ないし八の証明部分の成立は認めるが、その余の部分の成立は知らない。第七号証の一、三、五、六の各照会部分の成立は認めるが、各報告部分の成立は知らない。第二九号証の原本の存在とその成立は認める。その余の甲号各証の成立は認める。

理由

(本案前の主張について)

原告が、被告局長の本件各差押処分に対し、行政不服申立手続を経ていないことについては、原告は明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。

ところで国税通則法(ただし、昭和四五年法律第八号による改正前のもの。以下同じ。)七六条一項は、国税に関する法律に基づく処分で国税局長がしたものに不服がある者は異議申立をすることができる旨定める一方、行政事件訴訟法八条、国税通則法八七条は、不服申立のできる処分については、不服申立の手続を経た後でなければ処分取消しの訴を提起することができないと規定しているのである。

もつとも、行政事件訴訟法八条二項三号、国税通則法八七条一項四号後段は、不服申立に対する決定を経ないことにつき正当な理由があるときには直ちに取消しの訴を提起し得る旨規定しているけれども、本件において、課税処分の滞納処分としての差押処分とは別個の行政処分であり、しかも、差押処分に対する不服申立手続において、課税処分に対する不服申立についてなされた判断と異なる判断を全く期待し得ないものではないから、滞納処分の前提となる課税処分について不服申立手続を経ているというのみでは、未だ被告局長の本件各差押処分の取消しを求める訴につき不服申立による決定を経ないことについて前記「正当な理由」がある場合に当たらないというべきである。

してみると、原告の被告局長に対する本件各差押処分の取消しを求める訴は、所定の不服申立手続を経ていない不適法なものといわざるを得ず、却下を免れない。

(本案の主張について)

一、請求原因1、2の各事実は、当事者間に争いがない。

二、原告は、まず、被告署長の本件更正処分等および被告局長の本件差押処分が無効であると主張するので、判断するに、行政処分が無効であるというためには、当該行政処分に重大な瑕疵が内在し、かつ、その瑕疵の存在が外観上明白であることを要すると解されるところ、本件全証拠によつても、被告らの右各処分を無効とするほどの重大かつ明白な瑕疵が存在するものとは認められないから、原告の右無効の主張は理由がない。

三、そこで進んで、原告が被告署長の本件更正処分等の取消しの原因となるべき違法事由として指摘する点について、次項以下に順次検討することとする。

四、納税義務者の認定の誤りの主張について

1  原告が昭和二〇年八月から旧原田興行社を営んでいたこと、訴外原田保が旧原田興行社の使用人であつたこと、昭和三一年八月右訴外人名義で原田建設が設立されたこと、原告が昭和三八年四月一七日施行の広島県議会議員選挙に当選したこと、同月二七日新原田興行社が設立されたことの各事実は、当事者間に争いがない。

2  成立に争いのない乙第四、第五、第一一号証、同第一三ないし第二四号証、第三三号証の一、二、同第六五号証一ないし三九、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるので真正な公文書と推定すべき乙第六号証の一、同第二五ないし第二七号証、第二九ないし第三二号証、弁論の全趣旨により、成立を認める乙第三四号証の一、二、証人竹口繁、同神崎政之介、同岩成久雄、同大崎利之の各証言を総合すると、原田建設の設立に必要な資本、機械器具類等は、訴外原田保が原告から任されて原告の資産を適当に振り分けて拠出されたこと、原田建設の営業が行われた事務所は、設立以来昭和四〇年ごろまで、旧原田興行社(昭和三八年四月以降は新原田興行社)の事務所とともに原告の自宅に居かれていたこと、原田建設は主として三次市から、新旧原田興行社は主として広島県からそれぞれ請負工事を受注していたが、同業者や下請先等との間において、原田建設と新旧原田興行社とは分別されず、両者は一括して原田土建として取引をなし、取引先からの請求書や領収書等は原田土建宛に発行され、取引先への支払も原田土建の名でなされることが多かつたこと、請負工事の受注の可否、高価な備品の購入等重要な事項については、原田建設の事業に関すると新旧原田興行社の事業に関するとを問わず、原告の指図によつて決定されていたこと、事業から生ずる収益は、原則として、原田建設の分は訴外原田保名義の預金口座に預け入れられ、旧原田興行社の分は原告名義の預金口座に、また新原田興行社設立後は同社名義あるいは原告の妻である訴外原田ツ子コ名義の預金口座に、それぞれ預け入れられていたが、それらの預金通帳はすべて、右原田ツ子コが原田建設、新旧原田興行社の現金、印鑑等と一緒に保管していたこと、取引先等への支払については、原田建設分、新旧原田興行社分ともに分別されることなく、新旧原田興行社の使用人である訴外中岩雄が取引先から提出された請求書等に基づいて作成した支払計画書が右原田ツ子コを通じて原告に提出され、そのうち原告が支払を承認した分について、右原田ツ子コがその保管にかかる前記預金口座のうち残高のあるものから適宜支払うべき金額を引き出し、右中岩雄に交付して支払をさせていたこと、訴外原田保は、必要に応じて、右原田ツ子コを通じ原告から生活費の支給を受けていたことの各事実が認められ、証人原田保、同中岩雄、同黒田敬治、同竹本晴義、同住吉正壮の各証言および原告本人尋問の結果のうち右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

右事実によると、原田建設は、形式上訴外原田保を事業者として建設業法に基づく建設業の許可を受けてはいたが、実質的にはその事業の主宰者は原告であり、原田建設の事業から生ずる所得は、原告に帰属していたものと認めるのが相当である。

そうすると、本件各係争年分の原田建設の事業所得が原告に帰属するものとしてなされた被告署長の本件更正処分等には、原告主張の如き納税義務者の認定を誤つた違法はないから、原告の右主張は失当であるといわなければならない。

五、本件更正処分等が禁反言則ないし信義誠実の原則に違反するとの主張について

すでに説示したとおり、原田建設の所得は、設立当初から原告に帰属すべきものであつたというべきところ、被告署長において、原告、訴外原田保らに対し、原田建設の所得を右訴外人の所得として確定申告するよう指導しあるいは助言を与えたこと、または、原田建設の所得の帰属の実態を正確に認識した上で、原告や右訴外人の確定申告を是認してきたことなどの事実を窺わせる証拠はなく、本件更正処分等は原田建設の実態を探知した被告署長によつて行われた是正措置にすぎないものというべきであり、原告らが、本件各係争年分の原田建設の所得に関し、右訴外人の確定申告どおり被告署長によつて承認されるべきことについて、保護されるべき正当な利益を有していたということはできない。

右の外、本件更正処分等が禁反言則ないし信義誠実の原則に違反するとの事実を窺わせる証拠はないから、原告の右主張は失当である。

六、推計課税の違法の主張について

被告署長は、原告の昭和四〇年分総所得金額を算定するにあたり、同年分工事利益金額について、実額調査によつて得られた原告の同年分工事収入金額を基礎とし、これに原告の昭和三八年一月から同三九年一二月までの間の工事収入にかかる工事利益率を乗じて昭和四〇年分工事利益金額を推計しているところ、弁論の全趣旨によれば、被告署長は、原告の同年分工事収入にかかる所得金額を計算するため、原告や訴外原田保の所持する帳簿書類等を調査したが、右調査によつては必要経費の金額を明らかにすることができなかつたことが認められる。してみると、被告署長が実額調査によつて把握した同年分工事収入金額を基礎として、推計の方法により工事利益金額を求めたことは止むを得ないものというべく、また、原告の同年分工事利益率は、その直前の昭和三八年一月から昭和三九年一二月までの二年間の工事利益率にほぼ等しいと推認されるから、昭和四〇年分工事利益金額を推計するにつき右二年間の工事利益率を適用したことは、合理性があるものとしてこれを是認することができる。

よつて、被告署長が、原告の昭和四〇年分工事収入にかかる所得金額を算定するために右推計の方法を採用したことは、違法ではないといわなければならない。

七、次に、原告の本件各係争年分の総所得金額について判断する。

(昭和三八年分総所得金額について)

1  給与所得金額

原告の昭和三八年分給与所得金額が九五万五、〇〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

2  事業所得金額

(一)  工事収入金額

(1) 別表二記載の工事収入のうち、次の各工事の収入金額については、当事者間に争いがない(以下、別表二記載の工事番号で個々の工事を特定し表示する。)

原田保名義38/4 四万六、五〇〇円

同 38/5 八三万六、〇〇〇円

同 38/6 八万三、二〇〇円

同 38/7 二一万六、八〇〇円

(原告は、右原田保名義38/7の工事収入金額を三一万六、八〇〇円と主張するから、右工事に関し少なくとも被告ら主張の二一万六、八〇〇円の収入金額があつたことは、当事者間に争いがない。)

同 38/8 一四万八、六〇〇円

同 38/9 二五万三、四〇〇円

以上合計 一五八万四、五〇〇円

(2) 成立に争いのない乙第三五号証の一ないし三、同第三六号証の一および一一、同第四〇号証、同第四三号証の一、二、同第五一号証、同第五二号証の一、二、同第五三号証を総合すると、前項の工事収入金額の外に、昭和三八年分工事収入金額として、別表二記載の工事収入金のうち前項の争いのない工事収入金を除くその余の工事収入額合計三、四三五万三、五三六円のあつたことが認められる。

(3) すると、原告の昭和三八年分工事収入金額は右(1)(2)の合計三、五九三万八、〇三六円となるが、弁論の全趣旨によれば、右工事収入金額のうち一、七一一万二、〇九〇円(原田保名義38/1の工事収入金額一二七万九、〇〇〇円のうち四四万六、二五〇円、同38/2の工事収入金額四二一万〇、七〇〇円のうち一八九万円、原告名義38/1の工事収入金額一、五七三万三、三〇〇円のうち一、〇四三万七、八四〇円、同38/2の工事収入金額七一七万三、一〇〇円のうち四三三万八、〇〇〇円)に対し、工事進行基準により、昭和三七年分所得税において既に課然済みであることが認められるから、右金額はこれを昭和三八年分所得税の工事収入金額から控除しなければならない。

以上によれば、昭和三八年分工事収入金額は一、八八二万五、九四六円となる。

(二)  雑収入金額

(1) 割戻金

成立に争いのない乙第五四、第五六号証、同第五七号証の一、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるので真正な公文書と推定すべき乙第五五号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第五七号証の二ないし五、同第五八号証の一ないし四、同第五九号証の一、二を総合すると、原告は、昭和三八年八月、訴外有限会社岩田砂利に対し砂利採取機械の購入資金として三〇万円を融資し、その反対給付として、右訴外会社から右機械で採取した砂利について一立方メートルあたり三〇円ないし四〇円を割戻金として収受したが、右割戻金の本件各係争年分の収受額は、昭和三八年分四六万七、一二八円、昭和三九年分一一〇万三、〇〇〇円、昭和四〇年分八万三、四六四円であつたことが認められる。

ところで、成立に争いのない乙第六〇号証の一、二によれば、原告は、昭和四〇年一二月一七日、右訴外会社に対し五三万二、六三三円を支払つていることが認められるところ、弁論の全趣旨によれば、右金額は前記割戻金の返戻金であると認められるから、右返戻金はこれを割戻金収入から控除すべきであるが、右返戻金が本件各係争年のうちいずれの年分の割戻金に対し支払われたのかは明らかでない。従つて、右返戻金については、これを本件各係争年分の割戻金額の割合に応じ按分して、各年分の割戻金額から控除する外はない。すると、右返戻金の各年分按分額は、別表七のとおり昭和三八年分一四万九、一三七円、昭和三九年分三五万六、八六四円、昭和四〇年分二万六、六三二円となる。

以上によれば、原告の割戻金収入は、昭和三八年分三一万七、九九一円、昭和三九年分七四万六、一三六円、昭和四〇年分五万六、八三二円となる。

(2) 賃貸料収入

前掲乙第三六号証の一、成立に争いのない乙第三六号証の一八によれば、原告には、広島県土木建築事務所長に対しブルドーザー等を賃貸したことにより、昭和三八年中に二五万六、四〇〇円の収入のあつたことが認められる。以上によれば、原告の昭和三八年分雑収入金額は、右(1)(2)の合計五七万四、三九一円となる。

(三)  工事原価

(昭和三八年中に完成した工事に対する総工事原価)

(1)  前掲乙第五三号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第六一号証の一ないし四、一一ないし一三、三〇、三二、三三、三七、三八、四九ないし五二、五五、六三、六四、七〇、七四、一〇三、一〇七、一一一、一三〇、一三一、一五四、二二七、二二八、二三九、二四六、二五六、二七七、二九〇、二九三、二九八、三一八、三二一、三二五、三三二、三三四、三五〇、同第六二号証の一ないし一〇、一二、一四、一六、一八、二〇、証人岩成久雄の証言により真正に成立したものと認められる乙第六七ないし第六九号証、同第七三、第八五、第八九、第九八、第一〇八、第一三五、第一三八、第一四〇、第一五九、第一六〇、第一六三号証、同第一七一ないし第一七三号証、同第一七六ないし第一七八号証、同第一八八号証を総合すると、原告は、昭和三八年分工事原価のうち、同年四月分以降の工事原価として、別表二の原田保名義38/1ないし原告名義38/祗 の工事原価明細欄記載のとおり、合計一、〇六四万三、八四三円を支出したことが認められる。

(2)  弁論の全趣旨によれば、昭和三八年中に完成した工事で昭和三七年中に着工された工事は、原田保名義38/1、同38/2、原告名義38/1、同38/2の各工事であること、右各工事のうち最も早いものは同年七月以降に着工されたことがそれぞれ認められるところ、前掲乙第二三号証、同第六五号証の一ないし一〇によれば、原告が昭和三七年七月から昭和三八年三月までに支出した材料費、外注費、経費の合計は、別表四記載のとおり九九二万五、二四八円であつたことが認められるが弁論の全趣旨によれば、右工事原価のうち七六万五、七四四円は昭和三七年中に完成した工事の原価であると認められるから(別表二の註一のとおり)、右金額を控除した九一五万九、五〇四円が、昭和三八年中に完成した工事に対する昭和三七年七月から昭和三八年三月までの材料費、外注費、経費の合計であると認められる。

(3)  証人神崎政之介の証言により真正に成立したものと認められる乙第一八九号証の一ないし九によれば、原告が昭和三八年一月から同年三月までの間に要した労務費は、同年一月分一六万五、四五五円、同年二月分二七万二、一八五円、同年三月分六一万〇、一六五円で合計一〇四万七、八〇五円であつたこと、原告が原田保名義38/1、同38/2、原告名義38/1の各工事に関し、昭和三七年一二月以前に要した労務費は、それぞれ八万九、八七〇円、三七万二、六二五円、七七万一、五八五円で合計一二三万四、〇八〇円であつたことがそれぞれ認められる。原告名義38/2の工事に関し昭和三七年一二月以前に要した労務費は、これを直接明らかにすることができないが、前記三工事の労務費のうち昭和三七年一二月以前の分と昭和三八年四月以降の分の合計額の右三工事の収入金額の合計額に対する割合は別表一七のとおり一一・三五パーセントとなり、原告名義38/2の工事の右と同じ期間の労務費が右工事の収入金額に占める割合もほぼ同様と推認されるから、これを前記認定の右工事の収入金額七一七万三、一〇〇円に適用すると、右期間の労務費は八一万四、一四六円となる。しかして、右労務費のうち昭和三八年四月分以降の金額が二九万七、八二五円であることは前記(三)(1)において認定した(別表二)とおりであるから、原告名義38/2の工事に関し昭和三七年一二月以前に要した労務費は、八一万四、一四六円から二九万七、八二五円を差し引いた五一万六、三二一円となる。

そうすると、昭和三八年中に完成した工事に関し、昭和三七年一二月以前に要した労務費の合計額は前記一二三万四、〇八〇円と右五一万六、三二一円とを加算した一七五万〇、四〇一円となるから、昭和三八年三月以前に要した労務費は、前記一〇四万七、八〇五円(同年一月分ないし同年三月分)と右一七五万〇、四〇一円との合計二七九万八、二〇六円となる。

以上によれば、昭和三八年中に完成した工事に対する工事原価の総額は、右(1)、(2)、(3)の合計二、二六〇万一、五五三円となる。

(昭和三八年分所得税の事業所得金額の計算において、右総工事原価から控除すべき金額)

前記認定のとおり、工事番号原田保名義38/1、同38/2、原告名義38/1、同38/2の四工事の収入金額合計二、八三九万六、一〇〇円のうち一、七一一万二、〇九〇円については、昭和三七年分所得税において工事進行基準により課税済みであるから、右課税済みの工事収入金額に対応する工事原価は、これを前記昭和三八年完成工事の総工事原価から控除しなければならない。ここで、右控除すべき工事原価の金額を直接明らかにする資料はないが、以下の方法により右金額を求めることができる。

(1)  まず、前記認定(別表一の説明のとおり)によれば、右四工事の昭和三八年四月分以降の工事原価は、それぞれ、一万六、八六五円、一四万二、八九七円、五二四万一、七七五円、七四万七、五五七円であり、その合計は六一四万九、〇九四円となる。

(2)  昭和三八年完成工事に対する同年三月分以前の工事原価合計は、前記認定のとおり、材料費、外注費、経費の合計九一五万九、五〇四円と労務費二七九万八、二〇六円との合計一、一九五万七、七一〇円であるが、前掲乙第六一号証の一、五一、六四、一三一、二二七、三二五、三三二、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第六一号証の五七の二、三、同号証の九二、一八一、三六七によれば、別表一の説明及び別表六のとおり、右金額には、同年一月から同年三月までの間に着工した工事番号原田保名義38/3原告名義38/3、同38/祗 の三工事の同年一月ないし同年三月の間の工事原価の合計額六一万〇、三六四円(それぞれ、一四万二、九〇四円、三六万八、三四六円、九万九、一一四円)が含まれていることが認められるから、前記一、一九五万七、七一〇円から右六一万〇、三六四円を差引いた一、一三四万七、三四六円が昭和三七年中に着工した工事番号原田保名義38/1、同38/2、原告名義38/1、同38/2の四工事の昭和三八年三月分以前の工事原価である。

(3)  右(1)、(2)によると、右四工事の工事原価総額は、六一四万九、〇九四円と一、一三四万七、三四六円との合計一、七四九万六、四四〇円となり、右四工事の原価率(工事収入金額合計二、八三九万六、一〇〇円に対する工事原価合計一、七四九万六、四四〇円の割合)は六一・六二パーセントであるから、右四工事の収入金額のうち課税済みの一、七一一万二、〇九〇円に対する工事原価の割合もほぼ同様であると推認されるところ、右課税済み工事収入金額に右原価率を適用すると、その工事原価は一、〇五四万四、四六九円となる。

(昭和三八年分所得税の工事収入金額の工事原価)

右事実によると、昭和三八年分所得税の工事収入金額の工事原価は、同年完成工事の工事原価総額二、二六〇万一、五五三円から昭和三七年所得税において課税済みの工事収入金額に対する工事原価一、〇五四万四、四六九円を控除した一、二〇五万七、〇八四円となる

(四) 一般管理費

成立に争のない乙第六三号証の一および四、証人岩成久雄の証言により真正に成立したものと認められる乙第六四号証の一および二一七ないし二五一ならびに弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和三八年分の一般管理費として別表一の一般管理費欄〈4〉ないし〈15〉記載の各経費合計三〇四万七、六九八円を要したことが認められる。また、前掲乙第一九号証によれば、原告は、本件各係争年当時、使用人の訴外原田保に対し、月額五万円、年間六〇万円程度の生活費を支給していたものと認められる。

そうすると、昭和三八年分一般管理費の合計は、三六四万七、六九八円となる。

以上によれば、原告の昭和三八年分事業所得金額は、工事収入金額一、八八二万五、九四六円と雑収入金額五七万四、三九一円との合計から工事原価一、二〇五万七、〇八四円と一般管理費三六四万七、六九八円とを差し引いた三六九万五、五五五円となる。

3 よつて、原告の昭和三八年分総所得金額は、給与所得金額九五万五、〇〇〇円と事業所得金額三六九万五、五五五円との合計四六五万〇、五五五円である。

(昭和三九年分総所得金額について)

1  給与所得金額

原告の昭和三九年分給与所得金額が一四九万一、三七〇円であることは、当事者間に争いがない。

2  事業所得金額

(一)  工事収入金額

昭和三九年分工事収入金額として、少なくとも別表一〇記載の工事収入金額三、七四四万五、二〇〇円のあつたことは当事者間に争いがない(原告が昭和三九年分工事収入として計上すべきであると主張する昭和三八年三次市本通祝橋線工事収入金三〇万円および同三次市三次町五日市工事収入金九万一、〇〇〇円は、前記認定のとおり昭和三八年分工事収入金額として計上すべきである。)。

(二)  雑収入金額(割戻金)

前記(昭和三八年分総所得金額について)の項の2(二)(1)に認定のとおり、昭和三九年分割戻収入金額は七四万六、一三六円である。

(三)  工事原価

前掲乙第五三号証、第六一号証の一、四、三八、五二、五五、五七の二、三、六四、一一一、一三一、二二八、二七七、二九〇、二九八、三一八、三二一、三三二、三三四、第六二号証の一、第六八、六九、第八五、第八九、第一三五、第一三八、第一五九、第一六三、第一七一ないし第一七三、第一七六ないし第一七八、第一八八号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第六一号証の五ないし九、一四ないし一八、二〇ないし二三、三四、三五、四〇、四二、五三、五四、五六、五七の一、六〇、六一、六五ないし六七、七一、七五、七六、八六、九二、九三、一〇四、一〇八、一二六、一二八、一三二、一四八、一五七、一六八、一七二、一七三、一八二、一八三、一八五、一九七、二一〇、二一一、二一八、二一九、二二九ないし二三一、二四〇、二四八、二六〇、二六八、二九一、二九九、三一九、三二六ないし三二八、三四九、三五二、同第六二号証の二四、二七ないし三四、三六、三八、三九、四一、四三、四五、四七、四九、五一、五三、五五、五七、六〇、六二、六四、六六、六八ないし七一、七三、七五、七七、七九、八一、八三、九〇ないし九二、九七、九九、一〇一証人岩成久雄の証言により真正に成立したものと認められる乙第七四、第八〇、第八六、第九五、第九六、第一〇四、第一〇九、第一一一、第一一六、第一一七、第一二三、第一二八、第一二九、第一三二、第一四一、第一五一、第一八一、第一八二号証ならびに弁論の全趣旨によれば、原告の昭和三九年分工事原価は別表一〇記載のとおり合計一、九三九万六、三八三円であつたことが認められる。

(四)  一般管理費

前掲乙第六三、第六四号証の各一、成立に争いのない乙第六三号証の六、証人岩成久雄の証言により真正に成立したものと認められる乙第六四号証の二五二ないし二八八ならびに弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和三九年分一般管理費として、別表九一般管理費欄〈4〉ないし〈15〉および〈18〉記載の各経費合計二六八万四、一四〇円を要したことが認められる。また、前記(昭和三八年分総所得金額について)の項の2(四)において認定したとおり、原告は、昭和三九年にも訴外原田保に対し年間六〇万円の生活費を支給していたものと認められる。そうすると同年分一般管理費の合計は三二八万四、一四〇円となる。

以上によれば、原告の昭和三九年分事業所得金額は、工事収入金額三、七四四万五、二〇〇円と雑収入金額七四万六、一三六円との合計から工事原価一、九三九万六、三八三円と一般管理費三二八万四、一四〇円とを差し引いた一、五五一万〇、八一三円となる。

3  よつて、原告の昭和三九年分総所得金額は、給与所得金額一四九万一、三七〇円と事業所得金額一、五五一万〇、八一三円との合計一、七〇〇万二、一八三円である。

(昭和四〇年分総所得金額について)

1  給与所得金額

原告の昭和四〇年分給与所得金額として、少なくとも一四四万四、八七〇円のあつたことは当事者間に争いがないが、右金額を越える給与所得金額があつたことについては立証がないから、原告の同年分給与所得金額は、一四四万四、八七〇円であるとしなければならない。

2  事業所得金額

(一)  工事収入金額

(1) 別表一二記載の工事収入金額のうち、番号3、4、6、9ないし14、16、17の各工事収入金額合計三、六一六万〇、二〇〇円については、当事者間に争いがない(原告は番号16の工事の収入金額を六万三、〇〇〇円と主張するから、右工事に関し少なくとも被告ら主張の六万円の工事収入金額があつたことは、当事者間に争いがない。)。

(2) 前掲乙第三五号証の一、三、第五三号証、成立に争いのない乙第三八号証の一、二、第四一号証の一、二、第四五号証の一、二によれば、原告には、昭和四〇年分工事収入金額として、前項の争いのない工事収入金額の外に別表一二記載の番号1、2、5、7、8、15、18の各工事収入金額合計二、〇二五万六、二〇〇円のあつたことが認められる。

(3) そうすると、原告の同年分工事収入金額は、右(1)、(2)の合計五、六四一万六、四〇〇円である。

(二)  工事利益金額

前記認定のとおり、昭和四〇年分工事利益金額の計算については同年分工事収入金額五、六四一万六、四〇〇円に昭和三八年一月から昭和三九年一二月までの間の原告の工事利益率を適用して推計すべきことになるが、別表一八によれば右期間の工事利益率は三一・七パーセントであるから、昭和四〇年分工事利益金額は一、七八八万三、九九八円となる。

(三)  雑収入金額(割戻金)

前記(昭和三八年分総所得金額について)の項の2(二)(1)に認定のとおり、昭和四〇年分割戻収入金額は五万六、八三二円である。

従つて、原告の同年分事業所得金額は、右工事利益金額と右雑収入金額との合計一、七九四万〇、八三〇円となる。

3  よつて、原告の昭和四〇年分総所得金額は、給与所得金額一四四万四、八七〇円と事業所得金額一、七九四万〇、八三〇円との合計一、九三八万五、七〇〇円である。

八 以上によれば、被告署長の本件更正処分等は、いずれも原告の総所得金額の範囲内で行われており、計算を誤つて原告の総所得金額を過大に認定した違法はないということができる。

九 被告広島国税局長に対する審査請求棄却裁決取消しの請求について審査請求を棄却した裁決の取消しの訴においては、原処分の違法を取消しの理由とすることはできないところ(行政事件訴訟法一〇条二項)、原告は本件審査請求棄却裁決の違法事由について何ら主張しないから、被告局長に対する審査請求棄却裁決取消しの訴はこれを棄却するほかはない。

一〇、被告国に対する請求について

前記のとおり、被告署長の本件更正処分等に原告主張のごとき違法はなく、従つて右課税処分に続く滞納処分として行われた被告局長の本件各差押処分も違法ではないから、国家賠償法一条に基づき、右差押処分の違法を理由としてなされた原告の被告国に対する損害賠償の請求は理由がない。

(結論)

如上の説示によれば、原告の本訴請求のうち、被告広島国税局長の本件各差押処分の取消しを求める訴は不適法であるからこれを却下し、その余の請求はいずれも理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 森田富人 裁判官 大谷禎男 裁判長裁判官中原恒雄は、転任のため署名押印できない。裁判官 森田富人)

目録二

1 三次市十日市町字十日市二二〇〇番九

宅地     三三三、八七平方メートル(一〇一坪)

2 同所二七六六番

宅地      六九、四二平方メートル(二一坪)

3 同所二二〇〇番一〇

原野     七五三、七一平方メートル(七畝一八歩)

4 同所二二一〇番九所在

家屋番号二二一〇番九

木造瓦葺平家建  居宅一棟

床面積    七四、三八平方メートル(二二坪五合)

5 同所二二〇〇番九所在

家屋番号六四五番二

木造枌葺二階建自動車庫

床面積 一階 六六、一一平方メートル(二〇坪)

二階 四一、三二平方メートル(一二・五坪)

目録一

1 応接セツト  五点セツト

2 ステレオ(パイオニア製)カペレート

3 ビクター一九吋コンソール型テレビ

4 洋 棚

5 洋画(大田忠画)雪山

6 応接セツト  四点セツト

目録三

電話加入権

三次局二三三一番

設置場所 三次市十日市町二二〇〇番地

別表一

昭和38年分事業(土木工事建設請負業)所得損益計算書

別表一(損益計算書)の説明

昭和38年に竣工した工事の収入金額およびその工事原価は別表二のとおり、それぞれ収入金額は35,938,036円であり、工事原価は22,601,542円であるが、これは次のとおり修正する必要がある。

即ち、本件係争年度の直前である昭和37年分所得金額の調査にあたつて、工事進行基準(工事収益について、実現主義の見地から、工事の完成した年度にその全額を完成年度の工事収益に計上するのが原則的な方法――工事完成基準――であるが、年度末に工事が未完成であつてもその工事進行程度を見積り、工事収益の一部をその年度の収益に計上する方法)により工事収入金額および工事原価を計算し、課税したのであるが、昭和38年分から原告の記帳方法は年度末の完成割合を見積つていないので、原則的な計算方法である工事完成基準により計算したのである。

したがつて、昭和38年分の所得金額の計算にあたつては、昭和38年に完成した工事で昭和37年に進行割合(完成割合)によつて課税済みの次表の工事収益は除去する必要がある。

前表の〈A〉欄『上記四工事の工事原価であるが工事別に区分できないもの』11,347,335円は、昭和38年に竣工した工事で自昭和37年7月至昭和38年3月間の工事原価(材料費、外注、労務費、経費)合計額11,957,699円から昭和38年1月から同年3月までの間に竣工した工事等前記四工事以外の前記期間における次表工事原価(別表六)合計610,364円を除去したものである。

以上により昭和37年末の未完成工事で工事進行基準により課税した収入金額17,112,090円に対する工事利益金額および修正後の昭和38年分事業所得の損益計算は次表のとおりである。

〈C〉欄の工事原価10,544,469円は、昭和37年分で課税済の工事収入金額17,112,090円に、〈B〉欄の昭和38年に完成した工事のうち、昭和37年にも工事進行基準により課税した工事の総収入金額(完成部分のみでなくその請負総額)28,396,100円に対する工事原価17,496,429円の割合(工事原価率)0.6162を乗じて計算したものである。

〈A〉欄の『昭和38年度に竣工した工事』欄の金額から前記〈C〉欄の金額を差引いた金額〈D〉欄が修正後の昭和38年分事業所得の損益計算である。

別表二

昭和38年分工事収入金額および同年分工事原価総括表

(注1)

自昭和37年7月(支払同年8月)至昭和38年3月(支払同年4月)間の材料費、外注費、経費、労務費

昭和37年7月(支払は同年8月)から同38年3月(支払は同年4月)までの材料費、外註費、経費の総額は別表四のとおり9,925,248円であるが、この工事原価が投入された工事のうち、本件係争年度前である昭和37年中に竣工したものは次の工事であり、この工事に対する工事原価は除去する必要がある。

(工事請負名義人) 原田 豊

(工  事  名) 生産道路改良(広島県)

(工 事 場 所) 三次市四十貫

(工 事 期 間) 着工 37.6.16

竣工 37.10.20

(工 事 代 金) 3,693,200円

(工事代金受入)  37.8.8 1,856,000円

37.9.20 1,080,000円

37.10.26 757,200円

上記工事に含まれている工事原価は下記のとおり765,744円であるから前記9,925,248円から右765,744円を控除した9,159,504円が自昭和37年7月(支払同年8月)至昭和38年3月(支払同年4月)間の材料費、外註費、経費の総額であり、この金額に前記同期間の労務費2,798,195円(別表五)を加算した11,957,699円が同期間の総工事原価である。

自昭和37年7月至昭和37年10月間の上記工事の工事原価は個々に確認できないので、前記期間の工事収入金額に対する工事原価(材料費、外註費、経費)の割合によつて算出すると次の〈1〉ないし〈3〉のとおり765,744円となる。

〈1〉 上記工事代金3,693,200円のうち次の入金額合計1,837,200円が自昭和37年7月至昭和37年10月間における工事収入金であると認定できる(完成割合(部分)を見積つて工事代金の一部を支払われるのが普通である。)

37.9.20 1,080,000円

37.10.26 757,200円

〈2〉 工事原価率は、次のとおり原告の昭和39年分の工事原価率(工事収入金額に対する材料費、外註費、経費の割合)41.68%を適用する。

昭和39年分工事収入金額 37,445,200円(A)

〃  工事原価(労務費は除く) 15,609,627円(B)

工事原価率 (B)÷(A) 41.68%

〈3〉 上記〈1〉の工事収入金額1,837,200円に〈2〉の工事原価率41.68%を乗ずると765,744円となる。

別表三

昭和38年分工事原価明細書(但し昭和38年5月以降に支払つたもの)

支払金額欄の〈材〉の表示は「材料費」の、〈外〉は「外註費」の、〈労〉は「労務費」の、また〈経〉は「経費」のそれぞれ略記号である。

(昭和38年4月以前に支払つた工事費は別途に一括計上した)

昭和38年4月以前に支払つた工事費は別途に一括計上した。

別表四

自昭和37年7月(支払同年8月) 至昭和38年3月(支払同年4月)

間の工事原価(材料費、外註費、経費)明細書

(1) 昭和37年以前分の労務費

(2) 昭和38年1月から同年3月までの労務費

(3) 昭和38年3月以前に支払つた労務費合計 2,798,195円

昭和37年12月以前分労務費((1)の(A)欄の金額) 1,750,390円

昭和38年1月から同年3月までの労務費((2)の(B)欄の金額) 1,047,805円

別表六

別表七

雑収入金算出明細書

別表八

原告が広島県三次土木建築事務所長から受入れたブルトーザーおよび自動車の賃貸料収入の明細書

別表九

昭和39年分事業(土木工事請負業)所得損益計算書

別表一〇

昭和39年分工事収入金額および工事原価総括表

別表一一

昭和37年分工事原価明細書

別表一二

昭和四〇年分工事収入金額明細表

別表一三

昭和40年分事業所得算出明細書

別表一四 昭和三八年度収入金

別表一五

昭和39年分工事原価明細表

別表一六

昭和四〇年度収入金

別表一七

(1) 昭和37年以前分の労務費

(2) 昭和38年1月から同年3月までの労務費

(3) 昭和38年3月以前に支払つた労務費合計 2,798,206円

昭和37年12月以前分労務費((1)の(A)欄の金額) 1,750,401円

昭和38年1月から同年3月までの労務費((2)の(B)欄の金額) 1,047,805円

別表一八

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